🌿 評論家・山田五郎さん逝去 ― 西洋美術を「身近な言葉」で語り続けた人
西洋美術の魅力を、誰にでも判る言葉で伝えてくれた評論家・編集者の山田五郎(本名武田正彦)さんが、原発不明癌のため14日に亡くなられました。67歳でした。葬儀は18日、親族と関係者によって静かに営まれたとのことです。
■ 少年期から美術と物語に親しんだ人生
1958年、東京都に生まれた山田五郎さん。少年期は関西で過ごし、高校では文芸部と美術部に所属。この頃から既に「言葉」と「美術」という、後の活動の核となる二つの世界に深く触れていました。
上智大学在学中にはオーストリアのザルツブルク大学へ留学し、西洋美術史を本格的に学びます。若い頃から海外で美術に触れた経験が、後の”判り易く語る美術解説”に繋がっていったのでしょう。
■ 編集者としてのキャリア、そしてテレビでの活躍
卒業後は講談社に入社し、若者向け雑誌「ホットドック・プレス」の編集長を務めました。
その鋭い視点と柔らかい語り口は編集の世界でも高く評価され、90年代には「タモリ倶楽部」「出没!アド街ック天国」などのテレビ主演をきっかけに知名度が全国へ広がりました。
アート、ファッション、都市文化など、幅広いテーマを独自の切り口で語る姿は、”知識人なのに気取らない””難しい話を面白くしてくれる”と多くの視聴者に親しまれました。
■ 独立後は美術を「生活の言葉」で語る評論家として
2004年に独立してからは、評論家として本格的に活動。西洋美術、時計、都市文化など多岐に渡るテーマで講演や執筆を続けました。
特に2008年に出版された『知識ゼロからの西洋絵画入門』(幻冬舎)は、美術の入門書として高く評価され、今もロングセラーとなっています。
美術を専門用語で語るのではなく、「この絵はこう見ると面白い」「当時の人はこんな気持ちで描いていた」といった生活者の目線で語るスタイルは、多くの人に”美術って楽しい”と思わせてくれました。
■ YouTube「オトナの教養講座」で新たなファン層を開拓
2021年からは、インターネット番組「山田五郎 オトナの教養講座」を開始。美術の知識がなくても楽しめる内容で、若い世代からシニアまで幅広い層に支持されました。
2025年には、その斬新さと面白さが評価され伊丹十三を受賞。”美術を語る人”としての存在感は、ネット時代に於いて更に大きなものとなりました。
■ 病と向き合いながらも「伝えること」をやめなかった
2004年10月、原発不明癌が見つかったことを番組で公表。抗がん剤治療を受けながらも視聴者に状況を報告し、体長が厳しい時期でも語り続ける姿は、多くの人の心を打ちました。
酸素チューブをつけながら出演した回では、「まだまだ話したいことがあるんだよ」と笑顔で語る姿が印象的でした。
最後まで”伝える人”であり続けた姿勢は、山田五郎さんの誠実さと情熱そのものだったと思います。
■ 山田五郎さんが残してくれたもの
山田五郎さんは、美術を「難しいもの」から「面白いもの」へと変えてくれた人でした。
・美術館に行くきっかけをくれた
・絵画の背景にある物語を知る楽しさを教えてくれた
・知識よりも”感じること”の大切さを伝えてくれた
その功績は、これからも多くの人の心に残り続ける筈です。
■ 最後に
山田五郎さんのご逝去は大きな悲しみですが、その語りは本や映像として残りこれからも私たちを楽しませてくれます。
心よりお悔やみ申し上げます。